宮崎神宮エリアに暮らすMIYAZAKI-JINGU AREAGUIDE

自主自律の精神がしっかりと根付いた環境で「人」を育てる「宮崎県立宮崎大宮高等学校」

「宮﨑神宮」の参道沿い。国道10号線のにぎやかな通りを1本入った閑静なエリアに「宮崎県立宮崎大宮高等学校」はある。進学校として知られる同校だが、「大学に合格させることを目標とはしていない」と校長の髙橋哲郎先生は話す。校風や指導の方針、文部科学省の「WWL事業」拠点校としての取り組みなどについてお話を伺った。

「宮崎県立宮崎大宮高等学校」
「宮崎県立宮崎大宮高等学校」

遠回りかもしれないが、経験や過程こそが一番の力になる

――「宮崎県立宮崎大宮高等学校」のあゆみをお聞かせください。

髙橋校長:本校は、1888(明治21)年に宮崎県尋常中学校として設置認可された宮崎中学校と、1895(明治28)年に宮崎町大淀村組合立高等女学校として認可された宮崎高等女学校を母体とし、1948(昭和23)年に「宮崎県立宮崎大宮高等学校」として発足しました。2024年で136年目を迎え、卒業生はゆうに5万人を超える宮崎県で最も古い学校です。学科は普通科が7クラス、国際社会をリードするイノベーター人材の育成を目指す文科情報科が2クラス設置され、生徒数は1,000人を超えます。「東京大学」や「京都大学」を含む国公立大学、有名私立大学の合格者を毎年多く輩出している進学校です。

――どのような校風ですか。

髙橋校長:「稚心を去れ」「質実剛健」「自主自律」の校是にあるように、自由かつ大らかでありながら、自分たちで責任をもって行動する自治の精神が息づいていると感じています。生徒たちが自ら課題や状況を認識し、判断・意志を示し、責任をもって行動する。そういった生徒の精神を私たち教員も大事にしています。

――生徒に対する指導の方針をお聞かせください。

髙橋校長:進学校ではありますが、単に生徒を大学に合格させることを目標とはせず、「人」を基盤とした指導を心がけています。人格の形成はもちろん、世界のどこかを支える有為な人材の育成に、教員と生徒が一丸となって取り組んでいます。「行ける大学」ではなく「行くべき大学」を目標に掲げ、そこを目指す過程が大事だと生徒たちには伝えています。

また、「高みを目指す」「やりたいことは全部やる」をスローガンとして、自分の可能性に全力で挑戦し、最後まで粘り強く挑み続けることを掲げています。かつ、結果主義ではなく、経験や過程こそが力であり、自分で歩き、登り、滑り、つまずいた分だけが力になると考えて取り組んでいます。

高橋哲郎校長先生
高橋哲郎校長先生

――結果よりも経験を重視した指導をされているのですね。

髙橋校長:現代の子どもたちは情報化の波にさらされ、ともすれば問いさえ発すれば考えることなく答えが返ってくる時代です。合理性や利便性が価値判断の基準とされる時代には、もちろん良い面もありますが、それが子どもたちの弱さにつながっていると感じることも多くあります。人生や社会を切り開いていくには、やはり経験に基づいた力こそが必要です。遠回りに感じるかもしれませんが、答えだけを知ったとしてもそれは本当の力にはなりませんから。

私は、子どもたちには360度の可能性があると思っていて、それは勉強でもいいし、スポーツでもいい。もちろん芸術でもいいし、とにかくやりたいことは全部やって、高みを目指していってほしいと思っています。

文部科学省の「WWL拠点校」として、海外の生徒たちと探究活動も

――特色ある活動を教えてください。

髙橋校長:学期に一度「大宮学びのスタイル」週間を設けています。ワークシートを用いて、学習における現状を振り返り、「ありたい自分とはどの程度の距離があるのか」を考えさせて、具体的に行動できるようにするというものです。その間は教員も課題解決型の授業を行い、生徒たちの学びのスタイルに合わせます。

「大宮学びのスタイル」の最終的な目標は、学力を身につけ、社会に出た後に自走できるようになることです。生徒たちには単に知識やスキルを学ぶだけの学習をするのではなく、メタ認知の力をつけて、学び方を自分でマネジメントできるようになってほしいと思っています。

教室の風景
教室の風景

――文部科学省の「WWL事業」における拠点校に指定されていると聞きました。

髙橋校長:はい。当校は2024年(令和6)年度から2026(令和8)年度において、文部科学省によるイノベーティブなグローバル人材を育成のための取り組み「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」における拠点校に指定されています。文科情報科の生徒を対象とした「グローバル協創」という取り組みでは、世界的な視点から課題を自らのものとして捉え、「宮崎大学」や「東京大学」、海外の大学と連携しながら探究的な学びを行います。

また、学科を問わず全生徒を対象として取り組んでいるのが、「イノベーションプログラム」と「海外姉妹校研修」です。「イノベーションプログラム」では台湾とベトナムの姉妹校から生徒を招き、本校の生徒たちと一緒に宮崎の企業を訪問、企業の強みを生かしたアイデアを考え、最終的にプレゼンを実施します。海外の生徒たちと共に取り組むため、活動はほとんど英語で行われます。

「海外姉妹校研修」では、姉妹校である台湾の「高雄高級中學」とベトナムの「グエン・タット・タイン中等教育学校」に30名ほどが1週間程度滞在します。いずれも非常に学力の高い学校であり、生徒たちはそこでホームステイや学校体験、フィールドワークに取り組みます。この他にも、県が実施する海外留学支援事業におけるシンガポールやアメリカへの研修に多くの生徒が参加しています。

校舎
校舎

――「WWL事業」のプログラムは生徒たちにどのような影響を与えているのでしょうか。

髙橋校長:「イノベーションプログラム」においては、多くの生徒たちが国際的な視点を育むきっかけになっていると思います。というのも、特に台湾の生徒たちは小学生から英語教育を受けていて、語学力が圧倒的に高いです。当校の生徒たちは太刀打ちできません。さらに、台湾、ベトナムの生徒たちは周囲に遠慮することなく自分の意見をどんどん発します。遠慮するのは恥ずかしいことだという気概すら感じられるほどです。

こういった体験は大きなカルチャーショックとなりますが、同時に「自分も世界で活躍したい」というモチベーションにもつながっているようです。実際に、昨年「海外姉妹校研修」の参加者を募った際には30名の枠に対し200名が手を挙げました。研修に参加した先輩から影響を受けて、参加を熱望する生徒も多いようです。

生徒主体で取り組む自治の精神が息づき、受け継がれていく

校是「自主自律」の文字が刻まれる
校是「自主自律」の文字が刻まれる

――校内行事の特色をお聞かせください。

髙橋校長:生徒主体の自治の精神が息づいていますから、文化祭やオープンスクールなどの行事では準備から当日の段取りまで、生徒が中心となって取り組んでいます。例えば、オープンスクールでは生徒たちが自ら中学生に向けて学習会を行い、その内容もすべて生徒たち自身で決めます。当日は「チューター」として中学生を引率し、交流会も実施します。非常に積極的に取り組んでくれるのですが、それは自分自身がオープンスクールで見た先輩チューターの姿に憧れたからという生徒がとても多いんですね。おかげで、多くの生徒がボランティアとして自らオープンスクールに携わってくれています。

――自主自律の校風に憧れて入学してくる生徒が多いのですね。

髙橋校長:はい。自主自律を実現できることはもちろん、自分から動けば周囲からいくらでも応援してもらえる環境です。教員としては大変ですが、生徒と一丸となって取り組んでいます。生徒会のメンバーもよく校長室に来てお弁当を食べながら私とディスカッションをしているんです。「制服を変えたい!」などという話も出てきて、「じゃあどうすれば良いのだろうね」と生徒と話をしています。

――自分たちで文化を作っていこうという生徒たちの意志を感じられます。

髙橋校長:当校では、「生徒にとって一番良い環境とは何か」ということを生徒たちと教員とで話し合って「生徒心得」という形でまとめているんです。例えば、自転車に乗る際のヘルメット着用は他校では校則として決められていますが、当校では校則としていません。「校則だからヘルメットを被る」のではなく、なぜ被る必要があるのかを理解した上で被らなければ意味がないと考えています。「どうすれば生徒がみんな被るようになるのか」と生徒会を中心に一生懸命考えているところです。

――部活動にも活発に取り組んでいるのですか。

髙橋校長:もちろんです。「やりたいことは全部やる」のスローガンを掲げているくらいですから、文武両道は当校にとって当然の姿です。40の部活動と同好会があり、9割近くの生徒が所属しています。文化部はどの部も県下のトップレベルで、カルタ部や美術部、書道部は全国大会、吹奏楽部や音楽部も九州大会へ出場しています。運動部では山岳部やカヌー部、陸上部、新体操部が全国大会、水泳部が九州大会へ出場。中でもカヌー部はインターハイでも優勝し、5名が日本代表として選ばれて世界大会へ出場します。「大宮高校の生徒は優秀だから」と言われますが、真剣に向き合って努力した結果だと私は思っています。

各部の入部希望者を募るホワイトボード
各部の入部希望者を募るホワイトボード

――生徒の特徴をお聞かせください。

髙橋校長:遊ぶときは遊び、勉強するときは勉強する、たくましい生徒たちです。自分たちが中心となって取り組む校風に憧れて入学してくる生徒が多いこともあり、みんな同じ志を持つ仲間たちと一緒に学びたいという気持ちを持っています。だからなのか、相手を尊重する心をみんな持っているように感じています。とはいえ、高校生ですからまだ幼さもあり、小さないさかいなどは時折起こりますが、自分たちの所属するコミュニティーを大事にしようとする様子は見て取れます。

神宮は利便性が高く、宮崎市の文教エリア

――学校周辺の住環境について教えてください。

図書館や美術館、芸術美術館のある「宮崎総合文化公園」
図書館や美術館、芸術美術館のある「宮崎総合文化公園」

髙橋校長:「宮﨑神宮」の参拝道路沿いにあり、近隣には閑静な住宅街が広がる落ち着いた地域です。近くには「宮崎公立大学」や「南九州大学宮崎キャンパス」、「宮崎大学附属幼小中学校」があるなど、本校を含めて宮崎の文教エリアでもあります。図書館や美術館、芸術劇場を擁する「宮崎県総合文化公園」も程近く、豊かな環境が整っています。さらに、宮崎市の中心部へのアクセスも良く、穏やかな住環境と利便性の高い地域で、教育環境に恵まれた地域ですね。

――生徒さんや教職員の方が学校近くで普段から利用されるおすすめスポットなどがあれば教えてください。

髙橋校長:近くを走る国道10号の歩道にアーケードがかけられた「江平商店街」は、地元の商店街としてにぎわっていますね。古くから生徒たちのお腹を満たしてきた「大盛うどん」など、多くの店舗が並んでいるおすすめのスポットです。

高橋哲郎校長先生
高橋哲郎校長先生

宮崎県立宮崎大宮高等学校

校長 髙橋哲郎先生
所在地:宮崎県宮崎市神宮東1-3-10
電話番号:0985-22-5191
URL:https://miyazakiohmiya-h.ed.jp/
※この情報は2024(令和6)年9月時点のものです。

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