個性ある店舗が並び、大型商業施設と共存する「宮崎駅前商店街」

「宮崎」駅西口から徒歩2分にある「あみーろーど」の愛称で親しまれる駅前商店街。制服姿の若者から年配の方まで多くの世代で賑わうこの通りは、ほんの10数年前まで空き店舗の多い閑散としたエリアだった。
しかし、今や空き店舗を探す方が難しいほど、駅前商店街には活気があふれている。2020(令和2)年に大型商業施設「アミュプラザみやざき」が駅前に開業したことが追い風となったが、何よりも魅力ある店舗が増えたことがその要因だろう。

そんな、あみーろーどを管理しているのが宮崎駅前商店街振興組合だ。同組合の代表理事であり、自身も商店街に店舗を構える野瀬慎太郎さんに、にぎわい創出のための取り組みやこの街で暮らすことの魅力などについて伺った。

宮崎駅前商店街振興組合代表理事 野瀬慎太郎さん
宮崎駅前商店街振興組合代表理事 野瀬慎太郎さん

再び活気づいた、かつてのシャッター街

――まずは、宮崎駅前商店街の歴史について教えてください。

野瀬さん:宮崎駅前商店街振興組合が結成されたのが48年前で、ちょうど宮崎県が新婚旅行ブームで人気となり、観光で湧いていたころです。今では撤去されたアーケードが作られたのも当時で、店舗数は100店ほどありました。しかし、それから徐々に減り、20年ほど前には30店ほどまでに減少してしまいました。そんな状況を打破しようとアーケードを撤去しましたが、それでもあまり変わらず閑散とした通りのままでした。

お話を伺った場所は野瀬さんご自身の創作和食の店「八九-HACHIKU-」
お話を伺った場所は野瀬さんご自身の創作和食の店「八九-HACHIKU-」

そんな中、駅前の再開発事業によってオフィスや飲食店などが集まる複合ビル「KITEN」が西口エリアにオープンしたことで、徐々に人通りが生まれるようになりました。さらに2020(令和4)年には「アミュプラザみやざき」が開業し、それに伴って駅前商店街が脚光をあびることも増えてきました。 

「八九-HACHIKU-」は落ち着いた店内になっている
「八九-HACHIKU-」は落ち着いた店内になっている

――「あみーろーど」という愛称も親しみやすくて、かわいらしいですよね。どんな由来があるのですか?

野瀬さん:商店街の近くにあったお寺で太平洋戦争の戦火を免れ、無傷で残っていた阿弥陀如来像が由来です。1,100年前に作られた木造の阿弥陀如来像で、非常に珍しく、本像は宮崎県の博物館に保管されています。また、「あみー」はフランス語で「友達」を意味し、その想いも込められています。

通り沿いにある
「阿弥陀堂」
通り沿いにある 「阿弥陀堂」

年間を通して数多くのイベントを開催

――駅前商店街には、どんなお店が多く出店しているのですか。

野瀬さん:7〜8割の店舗が飲食店です。お昼のみ営業しているカフェやパスタ屋さん、逆に夜だけ営業している焼き鳥屋さんなどがあり、昼と夜で違った顔が見られるのも特徴です。

現在は全部で55店舗ほどが営業しており、1階の店舗はほぼ埋まっている状況です。30〜40代の若い経営者が多いのが特徴ですが、以前から経営している方々も変わらずいらっしゃいます。

今こうやって商店街が注目を浴びることが増えましたが、40年以上前から商店街のために尽力してきた方々がいたからこそだと思っています。70〜80代で現役のオーナーさんたちもいらっしゃり、僕らの世代にバトンをつないでくださいました。

「アミュプラザみやざき」やま館前にある立て看板
「アミュプラザみやざき」やま館前にある立て看板

――どんなお客さんが多くいらっしゃいますか。

野瀬さん:「アミュプラザみやざき」が開業する前は、近隣の企業で働いている方々がメインでした。開業後は特に週末の学生さんが増えましたね。ご年配のご夫婦もよく見かけます。でも今も変わらず近隣の企業の方々も多く、平日のランチタイムはスーツを着た人たちが通りを歩いていらっしゃいます。

宮崎駅前商店街の様子
宮崎駅前商店街の様子

――組合ではさまざまなイベントも行っていらっしゃるそうですね。

野瀬さん:はい。年間を通していくつかイベントを開催しています。まず、1月の「十日えびす祭り」。通りにある阿弥陀堂で餅つきを行い、ぜんざいや豚汁のふるまいを行います。2月にはスタンプラリー、10月には「大街市」として中心市街地にある他の通りとともに大きなイベントを開催しました。

お堂の中に祀られている「阿弥陀如来像」
お堂の中に祀られている「阿弥陀如来像」

また、11月の第3土日にも盛大なお祭りを行います。初日は阿弥陀様を祀る「あみだ祭り」で、ステージを設けて子どもたちのダンスや高校生の吹奏楽の披露をしたり、飲食店が出店したりと、非常ににぎやかです。2日目は「宮崎アソビロード」として、昨年は商店街のさまざまな場所にボードゲームやカードゲームを用意したり、駄菓子屋さんに出店してもらったりしました。特に昨年は「JR九州」と「アミュプラザみやざき」も同時にイベント開催したこともあり、1万人ほどの人出がありました。

小さなお店ならではの距離感を楽しんでもらいたい

――商店街の活性化のために行っている取り組みは他にもありますか。

野瀬さん:5年前からオリジナルの「駅前散歩マップ」を作成しています。個人店が多いので、初めてのお店にも入りやすいようにと考え、マップを作成するに至りました。1万部作成しており、各店舗や阿弥陀堂、商工会議所や近隣のホテルなどに置いています。このマップを片手に歩いていたり、「ごはん食べたあとに、このカフェに行ってみようか」などと話していたりするのを見かけることもあります。

駅前散歩マップ
駅前散歩マップ

また、商店街の美化活動にも努めています。組合で年に2回の大清掃や植栽を行っています。街頭にはツタが絡まったようなモニュメントがあり、その根元にあるプランターに多肉植物を植えているんですよ。手入れも少なくてすむし、年中きれいなのでなかなか評判です。

我々だけでなく、近隣の企業の方々も月に1回、ボランティアで清掃活動を行ってくださっていて、周辺の方々とも良い関係が築けていると感じています。

植栽された多肉植物
植栽された多肉植物

――「アミュプラザみやざき」の開業は、商店街にどのような影響を与えましたか。

野瀬さん:開業が決まったというニュースが流れたとき、商店街でネガティブな話はほとんどありませんでした。むしろ人が集まる波及効果に大きな期待が寄せられましたね。実際にイベントなどを通じて、商店街がメディアに取り上げてもらう機会も増えましたし、「いつも何かやっているな」と思ってもらえるようになったと感じています。

「アミュプラザみやざき」
「アミュプラザみやざき」

また、街の機能としての棲み分けもうまくできているのではないでしょうか。我々は個人店として、大型商業施設にはない個性的な商品や人、接客などを提供できていると思います。小さなお店ならではの近い距離感が楽しめるのではないかと考えています。

暮らす街としても魅力的な宮崎駅前エリア

「宮崎中央公園」
「宮崎中央公園」

――生活環境としての「宮崎」駅前周辺にはどのような魅力があると思いますか。

野瀬さん:スーパーや病院、学校、銀行など生活に必要なインフラの整備が徒歩圏内で完結していることですね。駅を中心とした「アミュプラザみやざき」には映画館もありますし、もちろん宮崎駅前商店街には魅力的な個人店が多くあります。また、駅の東口には「宮崎科学技術館」、その隣には広々とした「宮崎中央公園」があり、お散歩やランニングにぴったりの場所です。子育てもしやすいと思います。

「宮崎」駅
「宮崎」駅

――今後の商店街の展望はなんでしょうか。

野瀬さん:宮崎駅前商店街は、いわば市街地への玄関口です。だからこそわくわくするような商店街を作っていきたいですね。他の商店街とも一緒に盛り上げていきたいと考えています。

とはいえ、新たなことにどんどん取り組んでいくよりも、今やっているイベントなどを地道にしっかりと続けていきたいなと考えているところです。

「宮崎」駅周辺の街並み
「宮崎」駅周辺の街並み

――最後に、これから「宮崎」駅前エリアに住んでみたいと考えている方にメッセージをお願いします。

野瀬さん:多くの飲食店が立ち並ぶ駅前商店街のエリアは、まるで街全体がメニュー表のようです。例えば「宮崎」駅の東口にある中央公園で軽く運動をして、お腹が空いたら商店街の飲食店で食事をというように暮らしに密着したスタイルで利用してもらえたらうれしいですね。

宮崎駅前商店街振興組合代表理事 野瀬慎太郎さん
宮崎駅前商店街振興組合代表理事 野瀬慎太郎さん

宮崎駅前商店街

宮崎駅前商店街振興組合 代表理事 野瀬 慎太郎さん
所在地 :宮崎県宮崎市広島2丁目11-7 宮崎駅前地区自治公民館内1F
電話番号:0985-26-3821
※この情報は2022(令和4)年4月時点のものです。